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こんにちは柬理(かんり)@keikanriです。
森見登美彦さんの小説は元々大好きで、2006年に新卒として入社してからよく電車の中で読んでいました。
一番最初に手を出したのが彼の恐らく最初の作品でもあり、第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した「太陽の塔
」。今作品の強烈なキャラクターと男臭いストーリーに当時恐ろしい程までに感情移入し、その後アニメ化もした「四畳半神話大系
」や「夜は短し歩けよ乙女
」といった作品を買っては貪る様に読んだ記憶があります。
このブログを始めてからはライフハックやビジネス書、自己啓発系の本を読む事が多くなってしまい、小説を読む事が激減してしまいました。しかし、本来大好きな小説をなんで読まないんだ?というジレンマとDan Kogaiさんの本「本を読んだら、自分を読め
」を読んだ時に、これじゃいかん。どんどん自分の好きな本を読もう!っと思ったんです。
そして本屋にいったら会社員時代大好きだった森見登美彦さんの新作「ペンギン・ハイウェイ
」が文庫本で発売されているじゃぁありませんか!2012年の11月に文庫化された様ですぐに買って読みました。今回こいつの読んだ感想を残そうと思います。
<簡単なあらすじ>
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まずは簡単なあらすじですが、こんな感じです。
主人公は日常のある事、ある事をノートのメモしあらゆる研究をたくさん持つ小学4年生アオヤマ君。そのアオヤマ君が住む海のない街に突如ペンギンが現れる。
しかし、そのペンギンは今度は突如姿を消し、それからまた色々な場所で姿を現す。
又、同時にクラスメイトのハマモトさんもある研究を行う。ジャバウォックの森と名付けられた森に突如現れる水でできた球体の様な存在、通称「海」。「海」の研究はアオヤマ君、又、宇宙好きの友人ウチダ君も参加する事になる。
そのすべての鍵を握るカフェ「海辺のカフェ」でチェスをアオヤマ君と打つお姉さん。
この謎をアオヤマ君が説いていく。
<森見登美彦さんの新境地>
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元々の森見登美彦さんの世界観は多岐に渡るのせよ、私の印象では強烈な個性を持った男達が、まるで妄想で女の子の話をするかの様な、ある種変態的で男臭い濃い話が笑いを呼ぶ作品というイメージが強い。
そして森見さん自身が奈良県生れで京都大学出身という事で今まで読んだ事ある作品の全ての舞台が京都だった事も記憶しています。
特に事前の知識を持つ事なく、森見さんの作品というだけでこの「ペンギン・ハイウェイ」を手にとった私はびっくりしました。
全く作風が違う・・・
っと。主人公はそんな男臭さは微塵も感じない小学校4年生のアオヤマ君。舞台が京都でもなければ内容もSFと今までと全く違う世界観。
しかし読んでいく内に森見ワールドは全く廃れていない事が良くわかります。アオヤマ君は自分が賢いとつねに感じており(まぁ事実賢いのだけれど)、その一貫した性格に随所で笑わせられる。特に私が好きだったのが以下の文章。こんな感じのシュールなユーモアが読んでいて楽しい。
ぼくがこうして本を読んだりノートを書いたり探検したりしている間にも、ハマモトさんのように研究している人がいるのだ。ぼくはこの街で一番えらい小学生ではないかと思った事を反省した。ひょっとするとハマモトさんの方がえらいかもしれないのだ。油断できないぞ、と思った。このように、慢心しないのが僕のえらいところだ。/p76
<恐るべし!主人公アオヤマ君のライフハック>
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呼んでいて面白いのは小学4年生のアオヤマ君がまるで大人の様にライフハック、仕事ハックな術を使って研究をする所。
アオヤマ君は川の水源はどこにあるのかを調べる「プロジェクトアマゾン」を始めとした複数の研究を持っています。その全ての情報を1つのノートにまとめ上げ、情報を一元化し研究を進めていきます。
又、夏休みには研究のやるべき事を洗い出し、小さいタスクに分け、複数のタスク、研究を同時進行で進めるという大人顔負けの仕事術を発揮します。
そして、研究が行き詰った時、父親のアドバイスからも学ぶ以下の手法を自分に適用します。
1.データの収集
↓
2.データの咀嚼
↓
3.孵化段階(毎日よく眠る)
↓
4.エウレカ!!(発見した)の瞬間
そう。ジェームス W.ヤングの著「アイデアのつくり方」でも説明されているこの方法をとって謎を解いていきます。そして謎が解けた瞬間、
「エウレカ」
っと呟くのです。
良いアイデアを作る5つのステップ 書評ジェームス・W・ヤング「アイデアのつくり方」 | KeiKanri
<SF初心者でも何のその>
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帯にはこうあります。
「最後のページを読んだ時、アオヤマ君とこの本を抱きしめたくなる」
っと。まさにこの帯は誇大表現でなく、美しいエンディングに私も満足です。
今作は2010年日本SF大賞を受賞した作品で、最近やっとSFに手を出し始めたSF初心者の私でも難なく簡単に読む事ができました。
新たな森見ワールド全開の「ペンギン・ハイウェイ」。ぜひおすすめです。
・・・なお、以下のページに森見さん自身による、「『ペンギン・ハイウェイ』のできるまで」が記述されています。ご興味ある方はぜひ。
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