地味、繰り返す地味。けど構成は超面白い【書評/ミステリー】樽 byF・W・クロフツ

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「樽」という小説があります。推理小説を数多く扱う創元推理文庫の中でもページ数は厚く、そして一文字のタイトルで目立ちます。ミステリー小説、推理小説の名作であるが故に少し大きな書店に行けば大体置いてあります。そしてすぐ見つかります。背表紙に空白多いし、厚いし。

今回は私もF・W・クロフツの処女作であり、最高傑作と言われる、そして名作といわれるこの樽に挑戦してみました。

はっきり先に書いてしまうとエルキュール・ポアロやシャーロック・ホームズといったカリスマ的な名探偵がちゃっちゃ、ちゃっちゃと名推理を披露するカッコイイ推理小説をイメージしていると肩透かしを喰らいます。

さて、樽はどんな作品、物語なのでしょう。以下に書評を纏めます。

Keikanri的「樽」あらすじ

パリからロンドンへの船のよる積荷の中に異質な重厚な樽があった。積荷を船から運ぶ際にその樽が落ちる。中からは複数の金貨、そして人間の死体があった。

この樽は誰がどんな目的で、どこから送られたのか。そしてこの死体は誰で、犯人は誰か。

ロンドン警視庁、パリ警視庁の捜査が始まる。そしてとある弁護士、とある探偵の捜査もその後始まる。

「樽」を読んでこう思った。

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photo credit: gharness via photopin cc

先に書いておくと、この書評で樽の構成も書くのでちょっとばかしネタバレになるかもしれません。

まず「樽」読んで、というよりも読んでて終始感じたのは地味って事。地味。繰り返す、地味。

大きく分けて3章構成になっており、1章が事件の全貌をロンドン警視庁が追い、2章でロンドン警視庁とパリ警視庁が事件の内容から犯人を少しずつ少しずつ割り出していきます。

その工程がホームズやポアロだったら恐らく椅子の上でゆっくりと考えるだけで推理するのでしょうが、彼らは警察官らしく足を使って地道に地道に捜査します。そして犯人をゆっくりゆっくりと割り出していくのです。ここが地味なのよ。

2章を読み終わるまで「とめどなくタルい、樽だけに」と感じていた私ですが、3章はかなり胸熱な展開でした。犯人と断定された人間を守る為にある弁護士と探偵が、ロンドン、パリ警視庁が犯人でないと断定した人間のアリバイを少しずつ少しずつ崩していき、最終的に真の犯人を突き止めます。

この展開が結構熱くて、それまで長ーく地味ーに捜査していた各警視庁の捜査を裏返していく様は中々に面白かったのです。

が、物語自体長く、盛り上がりどころが終盤まで長く、そこまで地味で、そして盛り上がりどころもポッと若干地味で、結構難解なプログレッシブロックを聴いているような小説でした。

ハマる人はハマるのかもしれませんが、個人的にはクロフツの他作品に手を出そうという気は今はしません。つまらないという程ではないのですが。

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