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新海誠監督は大好きなアニメ監督です。
「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「星を追う子ども」「言の葉の庭」「だれかのまなざし」と、どれもこれもが美しい映像美と哀愁ただよう物語に満ち満ちていて本当に素晴らしいのです。
その中でも個人的に彼の作品で一番好きなのが「秒速5センチメートル」。ちなみに秒速5センチメートルとは桜の舞い散る速さだそうです。
3部編集で主人公である遠野貴樹の、「小学校から中学1年生」「高校3年生」「大学生から30歳手前の社会人」がそれぞれ描かれます。
小学校6年生まで同じ学校で過ごし、特別な存在であった篠原明里への思いを馳せたままに、数人の女性と恋をしていくのですが、その1つ1つがとても悲しく、そして美しい。
アニメ版は大好きでかれこれ10回近く見ました。しかし今回始めて小説版を読んで、文章で綴られるこの物語の独特の美しさ、悲しさにまたも感動しました。
少なくとも恋愛小説(なのかな)では、今まで私が読んだ小説で一番好きな作品です。ご紹介したい。ホントご紹介したい。だから、私、書評、書く。
読めば読むほどの胸が掻きむしられる様な哀愁、喪失感
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新海誠さんの作品は、彼自身がインタビューでも語っている様に「喪失感」がテーマになっています。
今まで彼が創りあげていった映像作品の数々も、様々な環境、立場、状況が絡み合った色々な喪失感が描かれており、個人的には世界一美しいアニメ背景を相まってそれは本当に本当に儚く美しく、それは描かれます。
秒速5センチメートルは上記でも書いた通り、3部に分かれていて、
第1部「桜花抄(おうかしょう)」では小学校から貴樹にとって大切な存在であった明里が、小学校卒業後栃木に引越し、そしてまた高樹自身も中学在籍時に種子島に引っ越す事が決まり、雪の降る日、東京から栃木へ明里に会いにいく話。
第2部「コスモナウト」では、種子島に引っ越した貴樹に思いを馳せる澄田花苗視点の話。貴樹はこの時も胸の何処かに明里に存在があり続ける。
第3部「秒速5センチメートル」では大学から再び上京した貴樹。今も明里に存在があり続ける中、他の女性とも付うも大きな喪失感に蝕まれる。一方明里は他の男性との結婚が決まる。
物語の中では2人は中学1年生、栃木で会って以来何通かの手紙のやり取りはあれど、実際に会う事はなく、アニメでは想い続ける貴樹の哀愁が描かれ続けていくのです。
私はこの物語を見ると本当に本当にいたたまれなくなってくるのです。しかしやっぱり定期的に見たくなって何度も何度も見るのです。そしていたたまれなくなって・・・(以下続くの永久ループに入ります。)
アニメでは語られない物語
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このアニメを書いているのも、映画の監督もどちらも新海誠さん自身であるため物語が大きく変わる事がありません。
しかしアニメでは一番短かった第3部「秒速5センチメートル」が最も書き込まれていて、貴樹が上京してからもいくつかの女性と付き合い幸せを感じている事。そして実は明里も貴樹に感謝をしている事がわかります。
アニメよりも各登場人物がいくらか救われた印象があります。
またアニメだと第3部に唐突に現れ、「誰だこれ?」状態の高樹の元恋人、水野理紗との生活も色濃く描かれます。
アニメでは語られない物語が小説にはたくさんあります。アニメだけ見た方も是非読んでみてほしいのです。
本当に色々な人に読んでほしい素晴らしい小説!
上記の通り、アニメ「秒速5センチメートル」を見た人には絶対に読むべき作品だと感じましたし、まずこの小説から読んでみて新海誠独特の喪失感を味わうのも良いでしょう。
又、彼自身が公言しているように村上春樹の影響も感じられます。なので村上春樹ファンにもおすすめしちゃう。
200ページもない短い小説です。しかし、その1つ1つの言い回し、単語、会話は本当に美しく、私は少しずつ味わう様に読んでいきました。
こんな素晴らしい物語は本当にたくさんの人に読んでもらいたい。素直にそう思っています。
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