【書評】京都を舞台とした背筋がゾクリとする4つの怪談「きつねのはなし」by森見登美彦

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photo credit: filmmaker in japan via photopin cc

こんにちは柬理(かんり)@keikanriです。

森見登美彦なる作家をご存じでしょうか。

あまりに男臭くて妙、それでいて良い意味でひねくれているであろう性格がにじみ出る文体を武器とした妄想作家で、出版する作品作品で私を笑いの渦へと貶める厄介な作家です。

彼自身太宰治が好きな事もあってか所々で太宰的なおどけ、ユーモアを感じます。まさにハマる人は私の様にどっぷりハマる。そして恐らくハマらない人は全くハマらない作家と言えるかもしれません。

彼には数多く面白い作品がありますが、特に森見登美彦という作家がどういった作家であるかどうかを見極めるには彼のデビュー作「太陽の塔」
を読む事をおすすめします。

京都に住む偏屈学生の妄想と現実の狭間にクスりとする事絶大です。

しかしながら、今回ご紹介する作品は彼の作品の中では異色と言える作品「きつねのはなし」。例えるなら暑さの耐えかねる漆黒の夏の夜に読みたい、そんな作品です。

<森見登美彦による流麗な文章で綴られる4つの怪談>

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photo credit: aurelio.asiain via photopin cc

森見登美彦は今まで数話の短編を書いていますが「四畳半自虐的代理代理戦争」「夜は短し歩けよ乙女」などなど明らかに楽しそうなタイトルばかりでした。

この「きつねのはなし」にも4つの短編が収録されています。表題は

1.きつねのはなし
2.果実の中の龍
3.魔
4.水神

このタイトルからもわかる通り、どれも少しばかり背筋がゾクリとする怪談となっております。今作はあの偏屈の極みたるデビュー作「太陽の塔」の次に発表された作品であり、当時私も驚きを隠せませんでした。

4つの話は全て京都が舞台となっており、読み進めていくと4話には共通点がある事にも気づきます。又、いつものあの独特な言い回しで人を笑わせる文体は鳴りを潜め流麗な凄く読みやすく、するするとそうめんの如く目に入ってくる文体が非常に美味でした。

彼自身が好きな太宰治も読みやすさを意識した文章を書いていたと聞いた事がありますが、それを意識しているかの様な綺麗で美しい文体。それでいて無上の読みやすい文章はその怪奇な話をさらに恐ろしく押上げてくれます。

4話それぞれ秀逸。又、途中で中断する事ができない先の気になる怪談で読み始めると時間を忘れて一気に読み進めてしまいます。是非夏の暑さ残る夜。この「きつねのはなし」のページを開いてみてください。

尚、森見氏の作品では「宵山万華鏡」
も同じく京都を舞台とした怪奇的な短編が数話収録されています。この「きつねのはなし」が気に入った人は是非チェックしてみてください。

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