システム運用者にこそ読んでほしい「小飼弾の「仕組み」進化論」

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photo credit: Leonardo Rizzi via photopin cc

今年になってから小飼弾@dankogai)さんの本をよく読みます。

小飼さんの本は私のよく活用しているkindleでもかなり安価で売られているので、その影響もあるとは思いますが単純に読んでいて面白いのです。

小飼さんのブログ「404 Blog Not Found」ではたまに「わざとか・・・」っと思うほどに難しく書かれていたりしますが、本になると凄く分かりやすく読みやすく楽しいかぎりでございます。

そんな訳で今回は2009年に発売された小飼さんの本「小飼弾の 「仕組み」進化論」を読みました。Kindleで安かったので。

この本を読んでいて私はデータセンターでシステム運用者として勤務していた頃を思い出しました。

私は20歳からとある金融系IT会社で働いており、26歳の途中まで約6年8ヶ月程働いていました。その間の研修以外のほぼ全て6年5ヶ月はずっとデータセンターでシステム運用者でした。

この本を読むと小飼さん自身がデータセンター業務の事にものすごく造詣が深い事が理解できます。それは小飼さん自身がオン・ザ・エッヂ(現ライブドア)データセンターの責任者として働いていたからという事もあるのでしょう。

彼の事を天才的なプログラマーだと単純に認識していた私としては驚きでした。ずっとシステム運用に携わってきた私からするとプログラマーとシステム運用者は、作る側と廻す側、最も理解しあわない対極の人間だと考えていたからです。

ではこの本を読んで私が感じた点を踏まえてご紹介します。

システム運用社の苦しみ

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photo credit: Arthur40A via photopin cc

どんな仕事にせよある程度の苦しみは発生するのでしょう。

私がシステム運用者として感じた仕事の苦しみもたくさんあります。

「こんな事して何の意味があるの?」
「こんな事まで運用者がやる事?もっと上流で考えろよ!」
「なんで完璧にできていないシステムをマンパワーで対応するんじゃい!!」

などなど運用者同士で飲めばそれはそれは盛り上がる事でしょう。

しかしながら、私が最も感じた不満は「モチベーションの低下」だった様な気がします。

24時間365日システムは廻り続ける。それを停止させる事なく運用し続ける。続けていけばシステムは怒涛のスピードで変わり続け、数も増えマニュアルもどんどんと増えていく。

そんなゴールのない業務に忙殺され、モチベーションが上がる事はありませんでした。

仕事のモチベーションを向上させる方法いくつかあると思いますが、システム運用者には「金銭的なモチベーション」というもので向上させる方法がアリだとこの本でも書かれていますし、私も賛成です。

少なくとも上司の叱咤激励では向上しない事は私が証明できます。

小飼さんがオン・ザ・エッヂ時代に、データセンターに勤務する人間には通常の1.5倍の賃金を払ったと書いてあります。

何かあればいつでも火消しに回る必要があり、上流から流れてくる業務は引き受けざるを得ない状況、そしてそれを回し続けるには単純ながらこういったモチベーション向上方法でも私はアリだと感じています。

真の20%ルールの適用

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photo credit: attivitoso via photopin cc

20%ルールはご存知?Googleでも活用されている方法で、超簡単に書くと仕事の20%は好きに、自分のやりたい事をやっていいいという考え方です。

しかし、小飼さんの考える”真”の20%ルールはちょいと違います。それは

「既存の仕組みを廻す仕事を勤務時間の20%で終わらせ、80%を新しい仕組み作りに当てる」

というもの。

私の在籍していた運用現場を考えても絶望的にこんな事はできていませんでした。

はっきりいってしまうと定時までの時間を100%と考えると、110%を既存の仕組みで廻し、30%で新しい仕組み・・・っというか新しい仕事を増やす作業をしていました。

はっきりいって

現状の仕事を全くといっていい程に仕組み化できていなかったのです。

コンピュータに任せるべき部分、もしくはオペレータに任せるべき部分を手作業で自分達で行いどんどんと既存の仕組みは簡素化される事なく肥大化していくばかりでした。

終わりのない仕事だからこその仕組み化

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photo credit: .sandhu via photopin cc

プログラミング言語Perlの開発者ラリー・ウォールはプログラマーの3大美徳を

「怠慢」
「短期」
「傲慢」

としたそうです。

1つ目に同じ作業を嫌う「怠慢」。同じ作業の繰り返しが評価の対象となる運用という業務だからこそ、作業は仕組み化するべきです。

2つ目に今の作業、環境に怒りを感じる「短気」。毎日毎日同じ作業をしているとコレが何故か不思議な事に、怒りを通りこして達観してしまいます。まぁ1時間残業すればいけるや。とかそんな風に。

それはイケない事です。そんな部分には怒りを感じて仕組み化で対応するべきです。

3つ目にあなたの作った仕組みを胸を張って自慢できる「傲慢」。あまりにスピードの早いリリース、更改によってマニュアルはどんどんと変化していきます。それを変更できずに効率の悪いまま使われ続ける。この仕組みを作ったのは誰かと言われた時に皆があなたを指さす。そんなのは耐えられる様になっちゃいけなません。

新しい取り組みよりもまずは今の仕組み化を

新しい仕事はどんどんと組み込まれていきます。

最初から真の20%ルールを適用しようとしてもできないかもしれません。最初は現状の仕組みを廻すのに100%かかるのかもしれません。

でも少しずつこのパーセンテージを下げていく事は絶対に大切です。

「怠慢」「短気」「傲慢」はプログラマーの3代美徳だけでなく、システム運用者の3大美徳とも言えると私は考えています。

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  1. […] photo credit: Anant N S (www.thelensor.tumblr.com) via photopin cc 本来であれば「システム開発 VS システム運用」になるのかもしれませんが、私が以前勤めていた会社は営業から直接運用業務が引き継がれる事もあったのでこんなサブタイトルにしました。 この本の主な内容ですが、超人気の携帯用ネットゲームのインフラ開発を行う室見立華(美少女1、ツンデレ、)。その部下である主人公。インフラ開発がアップアップになっている状態で既に出来ているシステムの運用を運用現場に引き継ぎたいが、拒否し続ける姪乃浜梢(美少女2、天然ふわふわ系、キレると恐い)。この2人がシステム引き継ぎをめぐって犬猿の仲に!!さぁどうする主人公!!って話しです。キャッキャうふふです。 私は上記の通り過去システム運用側にいたのでこの姪乃浜梢という美少女の、、美少女のいう事はよく理解できました。 運用側はもう引き受けてしまった所から責任はほぼ運用サイドにあります。運用設計に、問題一覧にのってないよーなわけわからん障害が発生した時もマニュアルにあるのかどうか調べてちょっとでもエスカレーション(各種連絡みたいなもの)が遅れたら 「エスカレーションが遅い!」 だの。運用マニュアルに乗ってたけどとりあえず後々面倒くさそうだしエスカレーションしとくか。とすると 「あれはマニュアルにのってるでしょ!わざわざそんな事で起こすな!」 と罵られ。あげくの果てには原因不明の障害に対して手作業によく人海戦術。それを3分以内に復旧させろ・・などなど。最終的に面倒な事を押し付けられガチなのが運用現場です。(余談ですが、小飼弾さんがある著書で「運用現場は給料を上げるべき!」という内容のことを書かれていました。その件は書評も書きましたので是非。) 運用現場の怒りは留まる事を知りません。 運用に引き継いだらそれ以降は運用の責任。という損な役回りの為、やっぱり小さなリスクでも洗い出そうとするのですが結局は納期や、最後には上からのお達しがあり運用は始まるのです・・。 […]

  2. […] 超有名プログラマー、ブロガーの小飼弾さんによる「仕組み」の部分にフォーカスを当てて書かれた本。今年は小飼弾さんの本をたくさん読んだ気がする。 この「小飼弾の「仕組み」進化論」ではIT会社の運用部門について書かれた部分もあり、元6年運用畑で過ごした私としては、「あぁもっと早く読みたかったぜ!!」と思った本でござい。 小飼弾の 「仕組み」進化論posted with ヨメレバ小飼 弾 日本実業出版社 2009-03-19 AmazonKindle楽天ブックス 書評→システム運用者にこそ読んでほしい「小飼弾の「仕組み」進化論」 […]

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