【書評】正典と正典の間を埋める正統派な外典群「シャーロック・ホームズの大冒険」

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photo credit: gregwake via photopin cc

シャーロック・ホームズシリーズを愛する人、よくシャーロキアンなんて言われたりしますがシャーロキアンにはどうしても悲しい運命が立ちはだかります。

既に作者であるコナン・ドイルは亡くなっており、いや作者はワトスンですかねw。まぁどちらにしてもワトスンにしてもドイルにしても既に亡くなってしまった作家。どうやったってシャーロック・ホームズの活躍する冒険譚を読むには限られた60の作品しか存在しないのです。

今からいくらシャーロック・ホームズの魅力にとりつかれてしまったとしても、全ての物語を読んでしまえば悲しい事にそれ以上の活躍を読む事はできません。

とかなんとか書いておきながら、実はまだまだシャーロック・ホームズシリーズはリリースされ続けています。

コナン・ドイルが書いた60の作品をシャーロキアン達は「正典」と呼びます。そして数多くリリースされているシャーロック・ホームズシリーズの登場人物を描いたドイル以外の作者の作品は「外典(パスティーシュ)」なんて呼ばれています。

この「外典」には素晴らしく完成度の高い作品から、恐ろしく完成度の低い、というよりもSFやホラーといった最早ドイルでは確実に書かない様な物語を書いたりする作品も多々存在します。

私は「正典」は全て読みましたが、「外典」には当たりハズれが多いと聞いていたのであまり手を出さずにいたのです。

そんな時私に文学の楽しさを、そしてシャーロック・ホームズシリーズの面白さを教えてくれた幼なじみの友人からいきなり「シャーロック・ホームズの大冒険 上」と、「シャーロック・ホームズの大冒険 下」を手渡されました。

どうやらまた彼はホームズ熱が再発しているようで、どうやらホームズの話をする人間を1人でも多く増やしたいのでしょう。

とりあえず私も最近ホームズの外典を読むようになりました。今回はその中の「シャーロック・ホームズの大冒険 上」と、「シャーロック・ホームズの大冒険 下」の感想です。

ワトスンが残したメモをもとに作家たちが書き上げる・・・っという設定のパスティーシュ群

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photo credit: Kaptain Kobold via photopin cc

この本の面白さは正典と正典の間を埋める正統派な外典(パスティーシュ)群である事です。

物語の多くはドイルの描く正典内で、過去の事件として事件名だけが綴られる事件(「あの忌まわしき赤ヒル事件が・・・・」など)をワトスンのメモを見つけた作者達が書き上げる・・・・っという設定で書かれた本です。

30~40ページの短編が20作品ほど収録されており、ワトスンと出会う前の物語から、ホームズが探偵を引退してからの物語などホームズの生涯が描かれている作品と考えていいでしょう。

正典を全て読み終えているシャーロキアンには中々におすすめな1作です。

ドイル、ホームズ好きには作品によって違和感ありかなと

しかしそれだけ多くの作者によるホームズ。中にはドイルでは書かないだろうと考えてしまう作品も多くあります。

中には推理が見事に外れてしまうダサめなホームズもいましたし、ホームズが実はキュリー夫人と友達。なんてとんでも設定もございました。

ぶっちゃけてしまえば2,3の作品に関しては読んでいる途中につまらなくて読み飛ばしてしまったものもあります。まぁ中には凄くドイルらしいカッコイイホームズが描かれたのめり込んでしまう様な作品があるのも事実です。

しかし当たりをひいた時も、ハズれを引いた時にもこれこそが外典を読む時に面白さなのだと感じました。今作はパスティーシュ作品の中ではかなりの有名作の様、興味のある方は是非手にとってみてください。

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