数学で感動できるとは【書評】フェルマーの最終定理

title
photo credit: @jojtblog via photopin cc

堀江貴文さんの本「ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った 」を読んで、最初に読みたくなって購入したのが、サイモン・シン著、青木薫訳のこの「フェルマーの最終定理」。

というよりも確かサイモン・シン著、青木薫訳という2人の本という時点で買いであると主張していたと記憶しています。

基本私は高校の頃は文系でしたし、専門学校時代、社会人時代もIT関係ではあったものの数学に関しては高校2年以来触れた事もありません。

しかしそんな私でもこの「フェルマーの最終定理」という数学界最難関の1つである定理を証明する物語に置いていかれる様な事なく、登場人物が何をして、どんな事を考えて、どんな偉業を成し遂げたのか。そんな事がスッキリと理解できる作品でした。そして物語終盤ではまさか数学で感動させられる事になるとは!!っと驚いたものです。

ではこの「フェルマーの定理」についてご紹介します。

数学者でなくとも分かる物語展開が美味

medium_94673490
photo credit: flgr via photopin cc

そもそもの「フェルマーの最終定理」とはどんな定理か知らない方も多いでしょう。私自身も「フェルマーの最終定理」という名称だけは知っていても、それが実際にどんな定理であるのかはこの本を読むまで知りませんでした。定理は以下の通りです。

3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組が存在しない

パッと見ると何を言わんとしてるかは、中学生の数学レベルでも恐らく内容自体は分かるはずです。17世紀フランスの数学者であるピエール・ド・フェルマーはこの定理を発明し、さらに自分には証明もできると書き残しました。しかもその書き残し方は非常にドラマティックで、

立方数を2つの立方数の和に分けることはできない。4乗数を2つの4乗数の和に分けることはできない。一般に、冪(べき)が2より大きいとき、その冪乗数を2つの冪乗数の和に分けることはできない。この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる。

というメモを残したのです。数学の証明にはあやふやな部分が一切あってはいけません。「フェルマーの最終定理」で言えば、nを1、2の場合を証明できたから証明完了という訳にはいきません。だってnは自然数であって無限に存在するからです。もちろん3の場合、4の場合、1000000の場合も全てに当てはまる事を証明する必要があるのです。

この一見簡単そうな定理は360年間に、多くの有名な頭脳明晰な数学者が証明に挑んで負けてきたのです。なにか数学ができない私にも大きなロマンを感じますな。

物語では序盤ピュタゴラスや、ディオファントスといったそれはそれは大昔の数学者からフェルマー自身の物語、そしてその後フェルマーの最終定理に必要な数学的テクニックの発見、そしてそのテクニックを活用して遂に数学者アンドリュー・ワイルズによって「フェルマーの最終定理」が証明されるという流れが物語の大筋となります。

その途中に出てくる「フェルマーの最終定理」の証明に必要な、日本の谷山豊、志村五郎が提唱した「谷山・志村予想」出現辺りは激アツな展開。特に志村五郎が最後ワイルズによってこの「谷山・志村予想」が証明された後に一言はグッときました。

数学で感動するとは全く思いませんでした。

medium_5320646943
photo credit: World Bank Photo Collection via photopin cc

この物語の主人公であるアンドリュー・ワイルズは、7年間1人で仕事以外は基本は自宅に篭ってこの「フェルマーの最終定理」に関する研究を孤独に行います。

数学界とは基本的に活発な横の繋がりがあるようで、ランチにワイワイと自分の研究の話しをしたり、アドバイスをもらったりという流れが普通で、その為証明の論文は数名の数学者による共著も多いようです。

しかし、ワイルズはその繋がりを一切断ち切って孤独な研究に身を投じるのです。

そしてワイルズはある時「フェルマーの最終定理」を証明し、一斉に注目を浴びました。しかし、その判定を受けるタイミングで1点どうしても証明できない部分にぶち当たり1年近く粘りますが、全く解決できなかったのです。

数多くいる「フェルマーの最終定理」の前にひざまづいた数学者と同じ人生となる、敗北宣言まで考えたワイルズですが1年間その問題に取り組み、妻の誕生日の前についに解決方法を、真の証明を思いつくのです。

この一度証明が揺らいだ後のワイルズの物語は本当に感動的で情熱的で、訳者の青木薫さん自身、近くにティッシュボックスを置いて端をかみながら推敲を続けたという事でした。

本当に本当にこの部分はステマとかではなく感動的で、私の頭の中では「全米が泣いた・・・」というフレーズが繰り返されました。いやワイルズイギリス人だけど。

何かにひたむきに、愚直に取り組む事の凄さ。と難しさ。

ワイルズはこの「フェルマーの最終定理」に子供の頃から関心があります。

その昔からの問題に長年孤独に付き合って闘い、そして勝ったわけです。7年間も同じ問題に取り組む事自体尋常でない努力でしょうし、それを孤独で行う事の忍耐力はハンパじゃありません。

そのワイルズの寡黙な努力家部分、それでいながら最後に証明を思いついた時のロマンチスト的なキャラクターも、この「フェルマーの最終定理」の面白さに拍車をかけます。

数学はちょっと・・・と思っている人。大丈夫です。物語を楽しむ事はできます。高校2年以来久々に数学に触れた私にだって理解でしました。なんたってワイルズの「フェルマーの最終定理」の証明は世界の数学者の10%程がやっと理解できる難解な証明です。

そんな内容をそのまま書いたって誰もわかりゃしません。それを分かりやすく書くサイモン・シン、それを本当に分かりやすく訳す青木薫さんにも本当に脱帽です。

是非、手にとってみてください。数学に興味のなかったあなたでも初めて数学で感動できるかもしれませんよ!?

スポンサーリンク

URL :
TRACKBACK URL :

コメントはこちらへ!

*
*
* (公開されません)